そう、誰もが棄てた記憶の片鱗。

どことなくねむぢえす

20081231

あまりにも蔵書の把握が取れていなくて同じ本やCDを被って購入してしまう事が多いため、書庫整理をする事にした。
今はやりの読書メーターでも使おうかと思ったけど、iPhoneラーなので携帯登録機能必須ではないし、密林に無い本は大抵登録公表したくないものだし(妖しい魔術書とか)、そもそもデザインが今一つ気に食わないのでブク□グでお世話になることにした。先行サービスだしペパ仔は軽薄で好き。
背中一面の壁に詰まった漫画本を片っ端から登録してって、兎に角漫画本ばっかりで目がチカチカしながら登録してって。この本棚を購入した時「これなら蔵書がすっぽり収まるだろう」と自信満々だったにも拘らず半分も収納出来なくて、どれを本棚に戻すかどれを温泉(我が家の物置部屋はこう呼ばれている)に仕舞うか、抜いたり差したりしていた思い出のあるこの本達をあらためて端からISBN登録していったら初めてそこでわたしの所有物になったようで、はからずも安心してしまった。今までそこに散らばっているだけだった本たちが名前を呼べば返事をかえす存在になった気がして、人間の脳って単純だなぁと思ったりもした。
ようやく本棚全ての漫画を登録し終えてさあ次は温泉だ、と、蓋を開けてみれば今登録した分以上の本が巻数もバラバラに箱の中で鎮座していて、漫画だけじゃなくて読んだか読んでないんだか分からないハードカバーの本とかぼろぼろ出てくるし、良く考えたら部屋には背中の本棚以外にもう一つ本棚があるんだった等と思い出したりして、面倒臭くなって作業がストップしてしまった。中途半端でしりがむずむずするけど、暇な時間を見つけてのんびり登録していく事にしよう。さようならとブラウザを閉じる。
所で温泉には本以外にCD、冬服、タオル、縫い包み、食玩、アンプ、シーケンサ、楽器、エフェクタラック、酒、ダンボール、書類、空き箱、骨董品、ディスコライト、壊れたパソコン、要らないモニタ、古いゲームなんかもあって、ちょっと1冊開こうかなんて時には床置きの押入れケースやらハンガーラックやらを押し退けて獣道を開かなくてはならない程混沌としていた。なので、まあそう頻繁に物を取り出すことも無いのだけれど、思い切っていらないものは捨ててしまう事にした。
車の背中をいっぱいに開いて、端からいらないものを詰めていく。いらないものを選別するには余りにもものが多すぎて、またひとつがいると感じたらすべてがいると感じてしまうから、いるものもいらないものも全てごっちゃで箱に詰めて車のトランクに乗せていった。初めて買ったパソコンモニタとか、第1号から集めてた雑誌とか、おじいちゃんが死んだ時に止まった時計とか、いろんなものを縛って放り込んでいった。実の所いらないものは何もなかったけど、もうみんな必要無かった。
体重が倍くらいになった車に乗り込んで快晴の道路をゆっくり走り、目指すは街外れの廃棄物処理場へ。道を進むにつれて幹線道路は狭く曲がりくねった田舎道となり、そのうち緩やかな曲線だけの、やたら視界の広い道となっていった。どうでもいいのだけれど今日は兎に角晴れている。モーニング・トレインを車の内側いっぱいに鳴り響かせながら、車はゆっくり走り続ける。馬鹿みたいに太陽は明るいしシーナ・イーストンも楽しそうだけれど、残念ながら私はこれから灰を撒きに行くのだよ。廃棄物処理場は大きな口をあけて私たちを待っていた。
落ちたものを潰す機械が止まってるうちにいらない全てのものを投げ込んだ。そっと落としても力いっぱい投げても、みんな地面にからだを打ちつけて粉々に散っていた。処理場の職員はいつもならムッツリ顔で粗野な指図しかしてこないのに、今日は何故だかやたらハキハキと働いている気がした。車と穴とを延々往来しながらさいごのひとつを投げ込もうとしたら、雑誌はこちらのワゴンにと案内されたので、静かに置いて帰ってきた。車はぽっかりからっぽだった。